#1から#4まで、立方体・スケッチ・ブラケット・アセンブリと、とにかく手を動かしてきた。部品作りと組み立ての基礎が一巡したので、今回は知識の回だ。3次元CAD利用技術者試験 2級に向けて、CAD共通知識・モデリングの概念・座標とビューを整理する。
やってみて分かったのは、知識回のいちばんのつまずきが「言葉の不一致」だったことだ。2級のテキストが使う用語と、Fusionの画面に出るボタンの名前が、同じものを指しているのに揃っていない。手で覚えた操作に「名前と理屈」を与えるのが今回のねらいになる。
今回のゴール
2級の頻出4領域 ― CAD共通知識 / モデリング概念 / 座標系 / ビュー・投影法 ― を、用語の丸暗記ではなく、これまで自分で作ったモデルの実画面に指で結びつけて理解する。営業で20年、客先の図面は数えきれないほど見てきたが、その図面が「なぜその配置で描かれているか」を言葉で説明できるようにするのが到達点だ。

手作業フェーズ: 自分の手元のモデルで用語を確かめる
テキストを読むだけだと用語が上滑りするので、#3のブラケットと#4のアセンブリを開いたまま、出てくる言葉を画面の上で指さして確認した。これが効いた。
つまずき① 「座標系」が、テキストとFusionで名前が違う
2級では座標系を絶対座標系(モデル全体で唯一の基準)と作業座標系(作図しやすいよう一時的に置く基準)で説明する。ところがFusionの画面にその言葉は出てこない。あるのは「原点」と「構築平面」だ。最初はまったく別物だと思った。
並べてみて腑に落ちた。絶対座標系=Fusionの「原点」、作業座標系=Fusionの「構築平面」で、中身は同じものだった。テキストは理論の名前、Fusionはその実体ボタンの名前を使っているだけ。さらに、原点からの値で位置を指す絶対座標と、直前の点からの差分で指す相対座標の違いも、座標値を打ち込んでみて初めて体で分かった。
つまずき② 第三角法の配置を、自分で逆に覚えていた
これは正直に書く。今回のお題を立てた時点で、私は三面図の配置を「正面図の下に平面図」と書いていた。確認したら逆だった。日本の標準である第三角法では、平面図は正面図の「上」、右側面図は「右」に置く。下に置くのは欧州式の第一角法で、配置がそっくり逆になる。
言葉で覚えようとすると毎回迷うので、Fusionで実際に向きを変えて目に焼き付けた。下のL字を正面・上・右から見ると、こうなる。

覚え方はシンプルだ。第三角法は「見た方向に、その図が来る」。上から見た図は上に、右から見た図は右に。しかも隣り合う図は寸法が必ず揃う ― 正面図と平面図は「横幅」が、正面図と右側面図は「高さ」が一致する。図面を読むときは、この揃いを手がかりに各図を対応づければいい。
つまずき③ なぜBlenderはCADの代役にならないのか、が腑に落ちた
CAD共通知識の領域で、3次元モデルの3つの表現 ― ワイヤフレーム(稜線だけ)・サーフェス(面の薄皮)・ソリッド(中身が詰まる) ― を読んで、ずっと抱えていた疑問が解けた。体積・質量・重心が計算できるのはソリッドだけで、#3のブラケットで重さが出せたのも、それがソリッドだからだ。
ツール選びでBlenderを退けた理由も、ここで言語化できた。Blenderが扱うメッシュ(ポリゴン)はサーフェスの一種で、見た目は作れても寸法駆動や正確な体積・図面が出ない。CADがソリッドを内部でCSG(基本立体の足し引き)やB-reps(面・稜線・頂点の境界で定義)として持っているのとは、土台が違う。データを他社CADへ渡すならソリッドを保てるSTEPが本命、という判断もこの知識の上に乗る。
同じ確認を、Claude Codeに自動でやらせるプロンプト
知識回でも、連載の核は変わらない。Claude Code(Fusion 360 MCP接続)に、確認用のL字を作らせて三面図を書き出させ、ついでに用語の一問一答まで出させる。実際、この記事のL字と三面図は、次のプロンプトでClaudeが生成したものだ。
Fusion 360 で、座標とビューの学習用に非対称なL字ブラケットを作って、三面図を書き出してください。条件: 1. 新規デザイン文書。単位はmm(Fusion APIの内部単位はcmなので換算する)。 2. 形状: ベース 60×40×10mm + 片端に立ち上がり 15×40×30mm を接合。三方向から見た形が全部違う非対称にすること。 3. カメラは「正投影」に固定(透視だと寸法が狂って見えるため)。 4. 等角・正面・平面・右側面の4ビューでPNGを書き出す。第三角法の確認に使う。 5. 仕上げに、2級の頻出用語(ソリッド/サーフェス、絶対座標系/作業座標系、第三角法 等)をFusionの実機能名と対応づけた一問一答を20問出題する。
面白いのは、手作業で踏んだつまずきが、そのままAIへ渡す条件に化けることだ。「正投影に固定」も「非対称にする」も、自分が手で見比べて初めて必要だと分かった指定だった。下が、そのプロンプトでClaudeが生成したL字になる。

そして、ここが知識回の肝だ。用語を自分の言葉にできて初めて、AIが出した一問一答や図が「正しいか」を判定できる。「第三角法は平面図が上」と自分が分かっていなければ、AIが下に並べた図を見ても誤りに気づけない。つまずいた箇所こそ、AIに外させてはいけない条件になる。だから一度は自分の頭で意味を通す意味がある。
今回の学び
知識回の収穫は、「2級の理論名」と「Fusionのボタン名」を橋渡しする対応表が自分の中にできたことだ。絶対座標系=原点、作業座標系=構築平面、フィーチャー履歴=タイムライン。手で覚えた操作に名前がつくと、テキストの問題文がそのまま自分の作業の記憶とつながる。営業で図面を見てきた経験も、「これは第三角法の正面図」と言葉で押さえ直すと、要望を構想設計に翻訳する初動が一段速くなる。
次回の予告
次は2級の知識学習②と模試へ。データ交換や周辺知識(CAE/CAM/3Dプリンタ)を足し、弱点を一問一答でつぶす。あわせてCBT(随時受験)の予約まで進める。覚えた知識を、点が取れる形に変える回にする。
復習ボックス ― #5 2級知識①(CAD共通知識・モデリング・座標・ビュー)
手順サマリ
- 2級テキストで4領域(CAD共通知識/モデリング/座標系/ビュー)を読む
- #3ブラケット・#4アセンブリを開き、用語を実画面に指さして対応づける
- ビューキューブで等角→正面→平面→右側面を切り替え、第三角法の配置を目で覚える
- 問題集を1セット解き、誤答した用語を3つ以内に絞る
つまずき早見表
| 症状 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 座標系の用語がFusionに無い | テキスト=理論名 / Fusion=ボタン名 | 絶対座標系=原点・作業座標系=構築平面 と対応づける |
| 三面図の配置を逆に覚える | 第三角法と第一角法で配置が逆 | 第三角法=平面図は上・右側面図は右(見た方向に図が来る) |
| 体積が計算できない | サーフェス/メッシュには中身が無い | 体積はソリッドのみ。Blenderのメッシュは代役不可 |
用語ミニ辞典
- ソリッド: 中身が詰まり体積・質量・重心が計算できる3D表現
- CSG / B-reps: ソリッドの内部表現(基本立体の足し引き / 境界で定義)
- パラメトリック: 寸法を変数として持ち、値変更で形が自動再計算される性質
- 絶対座標系 / 作業座標系: 全体の基準 / 一時的な作図用の基準(=原点 / 構築平面)
- 第三角法: 平面図を正面図の上、右側面図を右に置くJIS標準の投影法
2級用語 ↔ Fusion用語の対応
| 2級(理論名) | Fusion(ボタン名) |
|---|---|
| 絶対座標系(ワールド/WCS) | 原点(3平面+3軸) |
| 作業座標系(ローカル/UCS) | 構築平面(オフセット平面) |
| フィーチャー履歴 | タイムライン(画面下部) |
| 正投影 / 透視投影 | ビューキューブ右クリック「正投影 / パース」 |
ショートカット・操作: ビューキューブのクリックで各面に正対 / 右クリックで正投影・パース切替 / Fは全体フィット
検定タグ: 3次元CAD利用技術者試験 2級 ― CAD共通知識・モデリングの概念・座標系・投影(ビュー)の各領域に対応。


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