#5で2級の前半4領域(CAD共通知識・モデリング・座標・ビュー)を整理したので、今回は知識学習の後半だ。フィーチャー操作の体系・データ交換形式・3次元データの活用・製図と規格の4領域を、一問一答で詰めていく。前半が「言葉の不一致」のつまずきだったのに対し、後半は手を動かして初めて間違いに気づく領域だった。
結論から書くと、今回いちばん転んだのはブール演算の「積(交差)」だ。一問一答で20問中19問は取れたのに、ただ1つ、「重なった共通部分だけ残す演算」を「和(くっつける)」と取り違えた。頭で覚えた言葉は、手で1回やると一気に正される。今回はその記録だ。
今回のゴール
2級後半4領域 ― フィーチャー体系 / データ交換 / データ活用 / 製図・規格 ― を、用語の暗記で終わらせず、Fusionの実機能と客先のやり取りに結びつけて理解する。営業で20年、客先やSIerと図面やデータを受け渡してきたが、「STEPで渡してください」が技術的に何を意味するかを、今回きちんと言葉にするのが到達点だ。

手作業フェーズ: ブール演算は、手で1回やらないと取り違える
一問一答で唯一外した「積」を、放置せずにFusionで実際に作って確かめた。やり方はシンプルで、直方体と円柱を重ねて置き、結合・切り取り・交差を1回ずつ実行して残る形を見比べるだけだ。
つまずき① 円柱が、箱にくっついて1つになってしまった
2個目の円柱を作るところで、いきなり転んだ。円柱を箱に重ねて作ったら、箱と円柱が1つのボディに合体してしまったのだ。これではブール演算用の「別々の2つ」にならない。
原因は設定だった。形状を作るとき、ダイアログの「操作」が「結合」のままになっていて、そのままOKしたせいで重なった瞬間に和(くっつける)が効いていた。別のボディとして残したいときは、操作を「新規ボディ」に変える ― これを知らずに「結合」のまま進めると、後で交差も切り取りもできない。皮肉なことに、この失敗そのものが「和=くっつける」の体感になった。
つまずき② 「積(交差)」は、残る形がいちばん小さい
2つの形をきちんと別ボディで重ねたうえで、修正メニューの「結合」(英語ではCombine)を開き、ターゲットに箱・ツールに円柱を選んで、操作を「交差」にした。結果が下だ。

体積を出すと、はっきりした。元の箱が約52cm³、円柱が約24cm³だったのに対し、交差で残った形は約9cm³ ― どちらより小さい。これが「積」の正体だった。集合のベン図と同じで、和は両方ぜんぶ、差は引いた残り、積はかぶっている所だけ。積はふつう体積がいちばん小さくなる。言葉で「交差」とだけ覚えていたから取り違えたが、残る形を見れば二度と迷わない。
つまずき③ 親(スケッチ)を消すと、子(押し出し)が壊れる
#5で残した宿題 ― フィーチャーの親子依存 ― も実機で確かめた。箱に角丸(フィレット)を付けた状態で、画面下のタイムラインのいちばん左、おおもとのスケッチを消してみた。すると後ろの押し出しに警告マークが付き、「もとの下絵を失った不健康な状態」になった。
立体が完全には消えず残ったのは、Fusionが直前の形を覚えているからだが、依存が壊れた事実は変わらない。作った順番(履歴)が、そのまま依存の鎖になっている ― これが#3でプロファイル選択に、#4で初期位置リセットにつまずいた時の正体だった。取り消し(Ctrl+Z)で親が戻れば、子も健康に戻る。壊して直すと、なぜ順番が大事かが体に入る。
同じ形を、Claude Codeに自動で作らせるプロンプト
手で意味を通したら、あとは反復だ。Claude Code(Fusion 360 MCP接続)に、ブール演算3種を1ボディずつ並べて作らせる。実際、この記事の比較カットはこのプロンプトでClaudeが生成した。
Fusion 360 で、ブール演算の違いを見比べる教材を作ってください。条件: 1. 新規デザイン。単位はmm(Fusion APIの内部単位はcmなので換算する)。 2. 直方体(40mm立方体)と円柱(半径12mm)を重ねたペアを、横に3組ならべる。 3. 1組目は「結合(和)」、2組目は「切り取り(差)」、3組目は「交差(積)」を適用し、結果を別々のボディとして残す。 4. 各ボディの体積を出力する(積がいちばん小さくなることを数値で確認したい)。 5. 等角ビューでPNGを書き出す。

面白いのは、手作業で踏んだつまずきが、そのままAIへ渡す条件に化けることだ。「結果を別々のボディとして残す」は、まさに私が操作を結合のままにして失敗したから書けた指定だし、「体積を出力する」も、積が最小だと数値で見たかったから足した。条件を知らなければ、AIにもうまく頼めない。
反復の威力がいちばん出るのはパターンだ。穴を1つだけ定義して、あとは円形パターンで複製する。下は「丸い板に6つのボルト穴」をClaudeに作らせたものだが、穴の位置と数さえ決めれば、6個でも20個でも手間は変わらない。

ここが連載の核だ。面倒な反復はAIに任せ、意味を決めるのは人。穴をどこに何個あけるか、どの演算で何を残すか ― その判断は人が握る。つまずいた箇所こそ、AIに外させてはいけない条件になる。だから一度は手で通す意味がある。
今回の学び ― データ交換は、客先のやり取りそのものだった
知識②でいちばん実務に効いたのはデータ交換形式だ。STEPはソリッドを正確に保って渡せる本命、STLは表面を三角形で近似する造形用で寸法が落ちる。「3Dプリンタ=高精度」のイメージと逆で、STLは近似データだ。だから加工や設計の受け渡しはSTEP、3Dプリンタ向けはSTLと使い分ける。
営業で「データで送ってください」と何度も言われてきたが、その一言の裏に形式の選択があったと今回ようやく分かった。「STEPで渡してください」「STLは加工指示には精度が足りません」と即答できるだけで、客先やSIERとのやり取りは一段スムーズになる。フィーチャーの体系(回転・スイープ・ロフト・シェル・パターン)も、はめあい(すきま/しまり/中間)も、こうして名前と意味がそろったのが今回の収穫だ。
次回の予告
次は2級の受験だ。知識①②を模試でつないで仕上げ、CBT(随時受験)に挑む。あわせて、MCPで小さな治具を自動生成する実験も走らせる。覚えた知識を、点が取れる形と、現場で使える形の両方に変える回にする。
復習ボックス ― #6 2級知識②(フィーチャー体系・データ交換・データ活用・製図規格)
手順サマリ
- 2級テキストで後半4領域(フィーチャー体系/データ交換/データ活用/製図規格)を読む
- 直方体と円柱を別ボディで重ね、結合・切り取り・交差を1回ずつ実行して残る形を見比べる
- タイムラインの親(スケッチ)を消して子(押し出し)が壊れるのを確認し、Ctrl+Zで戻す
- STEPとSTLで書き出し、ソリッド保持と三角メッシュ近似の違いを見る
- 模試を1セット解き、誤答領域を1つに絞る → CBTを予約する
つまずき早見表
| 症状 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 2個目の形が既存ボディにくっつく | 操作が「結合」のまま | 別ボディで残すなら操作を「新規ボディ」に変える |
| 「積(交差)」の意味を取り違える | 言葉だけで覚えている | 残る形を見る。積=共通部分だけ=体積が最小 |
| 立体が壊れる・警告が出る | 親フィーチャー(スケッチ等)を消した | 親子依存。Ctrl+Zで親を戻すと子も健康に戻る |
| 3Dプリント用データで寸法が合わない | STLは三角メッシュ近似 | 設計・加工の受け渡しはSTEP、造形はSTLと使い分け |
用語ミニ辞典
- ブール演算: ソリッド同士の論理演算。和(結合)/差(切り取り)/積(交差)
- 新規ボディ: 重ねても合体させず、別のボディとして残す操作オプション
- STEP / STL: ソリッドを正確に保つ交換形式 / 三角メッシュで近似する造形用形式
- マスプロパティ: ソリッドだから計算できる体積・質量・重心・慣性
- はめあい: 穴と軸の組合せ。すきまばめ/しまりばめ/中間ばめ
- 幾何公差: 寸法公差では表せない形の正しさ(真直度・平面度・位置度 等)
寸法・設定値(再現用)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| ブール演算の検証ペア | 直方体40mm + 円柱 半径12mm を重ねる |
| 2個目の形の操作 | 新規ボディ(結合のままにしない) |
| 円形パターン | 穴1個 → Z軸まわり 6個・360度 |
ショートカット・操作: 押し出しはE / フィレットはF / ブール演算は「修正→結合」 / パターンは「作成→パターン」 / タイムラインは画面下部・右クリックで編集と削除
検定タグ: 3次元CAD利用技術者試験 2級 ― フィーチャー操作の体系・データ交換形式・3次元データの活用・製図と規格の各領域に対応。


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