Fusion 360をAIと合作で覚える #6 ― ブール演算の「積」でつまずき、データ交換で腹落ちした

3D/CAD

※当サイトの記事には、アフィリエイト広告(PR)を含みます。

#5で2級の前半4領域(CAD共通知識・モデリング・座標・ビュー)を整理したので、今回は知識学習の後半だ。フィーチャー操作の体系・データ交換形式・3次元データの活用・製図と規格の4領域を、一問一答で詰めていく。前半が「言葉の不一致」のつまずきだったのに対し、後半は手を動かして初めて間違いに気づく領域だった。

結論から書くと、今回いちばん転んだのはブール演算の「積(交差)」だ。一問一答で20問中19問は取れたのに、ただ1つ、「重なった共通部分だけ残す演算」を「和(くっつける)」と取り違えた。頭で覚えた言葉は、手で1回やると一気に正される。今回はその記録だ。

今回のゴール

2級後半4領域 ― フィーチャー体系 / データ交換 / データ活用 / 製図・規格 ― を、用語の暗記で終わらせず、Fusionの実機能と客先のやり取りに結びつけて理解する。営業で20年、客先やSIerと図面やデータを受け渡してきたが、「STEPで渡してください」が技術的に何を意味するかを、今回きちんと言葉にするのが到達点だ。

3次元CAD利用技術者試験2級 知識②の出題マップ。フィーチャー体系・データ交換形式・データ活用・製図規格の4領域を縦に整理した図
【図解】今回押さえた2級 知識②の4領域。スマホでも読めるよう縦1列・大きめの文字で整理した

手作業フェーズ: ブール演算は、手で1回やらないと取り違える

一問一答で唯一外した「積」を、放置せずにFusionで実際に作って確かめた。やり方はシンプルで、直方体と円柱を重ねて置き、結合・切り取り・交差を1回ずつ実行して残る形を見比べるだけだ。

つまずき① 円柱が、箱にくっついて1つになってしまった

2個目の円柱を作るところで、いきなり転んだ。円柱を箱に重ねて作ったら、箱と円柱が1つのボディに合体してしまったのだ。これではブール演算用の「別々の2つ」にならない。

原因は設定だった。形状を作るとき、ダイアログの「操作」「結合」のままになっていて、そのままOKしたせいで重なった瞬間に和(くっつける)が効いていた。別のボディとして残したいときは、操作を「新規ボディ」に変える ― これを知らずに「結合」のまま進めると、後で交差も切り取りもできない。皮肉なことに、この失敗そのものが「和=くっつける」の体感になった。

つまずき② 「積(交差)」は、残る形がいちばん小さい

2つの形をきちんと別ボディで重ねたうえで、修正メニューの「結合」(英語ではCombine)を開き、ターゲットに箱・ツールに円柱を選んで、操作を「交差」にした。結果が下だ。

箱と円柱の交差で残った共通部分だけのボディ。上面に箱の切り口が残る
【スクショ】交差(積)で残ったボディ。箱と円柱が重なっていた共通部分だけが残る。上のえぐれは箱の面が円柱を切った境目

体積を出すと、はっきりした。元の箱が約52cm³、円柱が約24cm³だったのに対し、交差で残った形は約9cm³ ― どちらより小さい。これが「積」の正体だった。集合のベン図と同じで、和は両方ぜんぶ、差は引いた残り、積はかぶっている所だけ。積はふつう体積がいちばん小さくなる。言葉で「交差」とだけ覚えていたから取り違えたが、残る形を見れば二度と迷わない

つまずき③ 親(スケッチ)を消すと、子(押し出し)が壊れる

#5で残した宿題 ― フィーチャーの親子依存 ― も実機で確かめた。箱に角丸(フィレット)を付けた状態で、画面下のタイムラインのいちばん左、おおもとのスケッチを消してみた。すると後ろの押し出しに警告マークが付き、「もとの下絵を失った不健康な状態」になった。

立体が完全には消えず残ったのは、Fusionが直前の形を覚えているからだが、依存が壊れた事実は変わらない。作った順番(履歴)が、そのまま依存の鎖になっている ― これが#3でプロファイル選択に、#4で初期位置リセットにつまずいた時の正体だった。取り消し(Ctrl+Z)で親が戻れば、子も健康に戻る。壊して直すと、なぜ順番が大事かが体に入る。

同じ形を、Claude Codeに自動で作らせるプロンプト

手で意味を通したら、あとは反復だ。Claude Code(Fusion 360 MCP接続)に、ブール演算3種を1ボディずつ並べて作らせる。実際、この記事の比較カットはこのプロンプトでClaudeが生成した。

Fusion 360 で、ブール演算の違いを見比べる教材を作ってください。条件:
1. 新規デザイン。単位はmm(Fusion APIの内部単位はcmなので換算する)。
2. 直方体(40mm立方体)と円柱(半径12mm)を重ねたペアを、横に3組ならべる。
3. 1組目は「結合(和)」、2組目は「切り取り(差)」、3組目は「交差(積)」を適用し、結果を別々のボディとして残す。
4. 各ボディの体積を出力する(積がいちばん小さくなることを数値で確認したい)。
5. 等角ビューでPNGを書き出す。
Claude Code が Fusion MCP で生成したブール演算3種。左から結合・切り取り・交差
【スクショ】Claude×Fusion MCPで生成したブール演算3種。左=結合(和)/中=切り取り(差)/右=交差(積)。右がいちばん小さい

面白いのは、手作業で踏んだつまずきが、そのままAIへ渡す条件に化けることだ。「結果を別々のボディとして残す」は、まさに私が操作を結合のままにして失敗したから書けた指定だし、「体積を出力する」も、積が最小だと数値で見たかったから足した。条件を知らなければ、AIにもうまく頼めない。

反復の威力がいちばん出るのはパターンだ。穴を1つだけ定義して、あとは円形パターンで複製する。下は「丸い板に6つのボルト穴」をClaudeに作らせたものだが、穴の位置と数さえ決めれば、6個でも20個でも手間は変わらない

丸い板に6つのボルト穴が円形に等間隔で並んだモデル
【スクショ】円形パターンで6つのボルト穴を一括複製。穴1個を手で決め、複製はFusionに任せる

ここが連載の核だ。面倒な反復はAIに任せ、意味を決めるのは人。穴をどこに何個あけるか、どの演算で何を残すか ― その判断は人が握る。つまずいた箇所こそ、AIに外させてはいけない条件になる。だから一度は手で通す意味がある

今回の学び ― データ交換は、客先のやり取りそのものだった

知識②でいちばん実務に効いたのはデータ交換形式だ。STEPはソリッドを正確に保って渡せる本命、STLは表面を三角形で近似する造形用で寸法が落ちる。「3Dプリンタ=高精度」のイメージと逆で、STLは近似データだ。だから加工や設計の受け渡しはSTEP、3Dプリンタ向けはSTLと使い分ける。

営業で「データで送ってください」と何度も言われてきたが、その一言の裏に形式の選択があったと今回ようやく分かった。「STEPで渡してください」「STLは加工指示には精度が足りません」と即答できるだけで、客先やSIERとのやり取りは一段スムーズになる。フィーチャーの体系(回転・スイープ・ロフト・シェル・パターン)も、はめあい(すきま/しまり/中間)も、こうして名前と意味がそろったのが今回の収穫だ。

次回の予告

次は2級の受験だ。知識①②を模試でつないで仕上げ、CBT(随時受験)に挑む。あわせて、MCPで小さな治具を自動生成する実験も走らせる。覚えた知識を、点が取れる形と、現場で使える形の両方に変える回にする。


復習ボックス ― #6 2級知識②(フィーチャー体系・データ交換・データ活用・製図規格)

手順サマリ

  1. 2級テキストで後半4領域(フィーチャー体系/データ交換/データ活用/製図規格)を読む
  2. 直方体と円柱を別ボディで重ね、結合・切り取り・交差を1回ずつ実行して残る形を見比べる
  3. タイムラインの親(スケッチ)を消して子(押し出し)が壊れるのを確認し、Ctrl+Zで戻す
  4. STEPとSTLで書き出し、ソリッド保持と三角メッシュ近似の違いを見る
  5. 模試を1セット解き、誤答領域を1つに絞る → CBTを予約する

つまずき早見表

症状 原因 対処
2個目の形が既存ボディにくっつく 操作が「結合」のまま 別ボディで残すなら操作を「新規ボディ」に変える
「積(交差)」の意味を取り違える 言葉だけで覚えている 残る形を見る。積=共通部分だけ=体積が最小
立体が壊れる・警告が出る 親フィーチャー(スケッチ等)を消した 親子依存。Ctrl+Zで親を戻すと子も健康に戻る
3Dプリント用データで寸法が合わない STLは三角メッシュ近似 設計・加工の受け渡しはSTEP、造形はSTLと使い分け

用語ミニ辞典

  • ブール演算: ソリッド同士の論理演算。和(結合)/差(切り取り)/積(交差)
  • 新規ボディ: 重ねても合体させず、別のボディとして残す操作オプション
  • STEP / STL: ソリッドを正確に保つ交換形式 / 三角メッシュで近似する造形用形式
  • マスプロパティ: ソリッドだから計算できる体積・質量・重心・慣性
  • はめあい: 穴と軸の組合せ。すきまばめ/しまりばめ/中間ばめ
  • 幾何公差: 寸法公差では表せない形の正しさ(真直度・平面度・位置度 等)

寸法・設定値(再現用)

項目
ブール演算の検証ペア 直方体40mm + 円柱 半径12mm を重ねる
2個目の形の操作 新規ボディ(結合のままにしない)
円形パターン 穴1個 → Z軸まわり 6個・360度

ショートカット・操作: 押し出しはE / フィレットはF / ブール演算は「修正→結合」 / パターンは「作成→パターン」 / タイムラインは画面下部・右クリックで編集と削除

検定タグ: 3次元CAD利用技術者試験 2級 ― フィーチャー操作の体系・データ交換形式・3次元データの活用・製図と規格の各領域に対応。

3D/CAD連載 索引(操作・用語から引く)

コメント

タイトルとURLをコピーしました