FA機器と工作機械の営業を20年やってきた。客先から「こんな装置が欲しい」「この機械で何ができるか」という相談を数えきれないほど受け、各メーカーの製品も市場の動きも見てきた。けれど、自分で図面を引いて装置の形を作ったことは一度もない。要望を聞いて、設計できる人につなぐのが私の仕事だった。
そこを自分で埋めたくて、Fusion 360を始めることにした。ただ覚えるのではなく、Claude(AI)と合作しながら覚える。営業として「市場が何を求めているか」の土地勘はある。足りないのは、それを自分で形にする手だ。その手をCADとAIで補えたら、要望を聞いて人につなぐだけでなく、構想を自分で形にして返せる側に回れる。この連載は、その学習ジャーニーの記録になる。第1回は環境構築と、最初の最小ループ ― 「私が指示し、Claudeが立方体を作る」までを通した話だ。
今回のゴール
Fusion 360の個人用(無償)を入れて、Claudeから出した指示で立方体が画面に出る。これだけ。形を作り込むのは来週以降で、今回は「AIと装置を合作する回路」を一本通すことに絞った。
やったこと ― 環境構築
手順そのものは難しくなかった。詰まりそうなところだけ書く。
- Fusion 360 個人用をインストールしてサインイン。最初にハブ(クラウドの保管場所)の作成を求められるが、一人で使う分には名前を一つ付けて進めればいい。
- Claudeと Fusion をつなぐ橋渡し役として、
ndoo/fusion360-mcp-bridgeというMCPの仕組みを導入した。やることは三つ。リポジトリを取得し、アドインをFusionの所定フォルダに置き、ClaudeにMCPサーバとして登録する。 - Fusion側でアドインを有効化する。ここまで来ると、Fusion・アドイン・Claudeの三点が同時に立ち上がった状態になる。

難しかったのはここだ。Fusion・アドイン・Claudeのどれか一つが立っていないと指示は届かない。営業で複数メーカーの機器を組み合わせた構成を提案してきたので、「単体で良くても、つながらなければ動かない」という感覚は身体にある。一つずつ切り分けて、三点が同時に立った状態にした。
Claudeが立方体を作った
設定を終えてClaude Codeを再起動し、こう打った。
Fusion接続を確認して、原点中心に一辺50mmの立方体を作って、アイソメでスクショ撮って
すると Claude が自分でFusionの状態を確認し、Pythonスクリプトを実行して立方体を作り、最後に画像まで書き出した。私はキーボードで一文を打っただけで、画面の中に50mmの立方体が現れた。


つまずきと解決
順調そうに見えて、Claudeは途中で二回つまずき、自力で回避していた。記録として残す。
一つ目は単位。Fusionの内部APIは長さをセンチメートルで扱う。50mmはAPIの中では5cm。Claudeはこれを理解して、原点中心になるように上下±2.5cmへ対称に押し出していた。
二つ目はスクリーンショット。本来用意されている撮影ツールが、私の入れたFusionのバージョンと噛み合わずエラーを出した。Claudeは別の書き出し方法に切り替えて、画像を保存しきった。同じ撮影を毎週繰り返すので、この回避策は手順書に残しておいた。
補足: ツールが一つ動かなくても、目的(画像を一枚得る)に対して別の道を選べば前に進める。完璧な環境を待つより、動いた道を記録していく方が学習は速い。
今回の学び
一番大きかったのは、「AIと合作する」が抽象論ではなく具体的な操作になった実感だ。私が言葉で意図を伝え、Claudeが形に落とす。立方体はただの箱だが、この回路が通ったことの意味は大きい。20年、客先の要望を聞いてきた人間にとって、その要望を自分の手で形にできるかどうかは大きな壁だった。その壁をAIが一緒に越えてくれる構図が、初日に動いた。
機械設計の経験はまだゼロのままだ。けれど、ゼロから始める人間がAIと組んだとき、最初の一歩がどこまで速くなるか ― それを等身大で見せていくのが、この連載の役割だと思っている。
次回の予告
次は手で覚える番だ。スケッチの基礎(線・寸法・幾何拘束)を、センサ取付板の2Dスケッチを寸法入りで描きながら身につける。AIに任せる部分と、自分の手で覚えるべき部分を、ここから分けていく。


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