#1の環境構築から#7の位置決め治具まで、Phase1(基礎+2級)をひと通り走り終えた。今回は新しい部品を覚える回ではなく、これまでの棚卸しをする回だ。やることは2つ。#1〜#7で手に入れた操作を1枚の板に全部詰め込んで再生成することと、「自分の手で通せる操作」と「まだAIやSIerに頼りたい操作」を仕分けてスキルマップにすることだ。
営業を20年やってきて、客先から「これ、おたくで作れる?」と聞かれる場面は数えきれない。これまでは製品を選んで売る側だった。Phase1を終えたいま、その問いに「どこまでは自分の手で形にでき、どこからは外注すべきか」を線引きして返せるようになったことが、いちばんの収穫だ。その線引きを、今回は一枚の図にする。
今回のゴール
ゴールは3つだ。①#1〜#7の操作を1枚の「総復習プレート」に集約して再生成する、②手で通せる操作とまだ頼る操作を2列で仕分ける、③Phase2(準1級・1級の実技+MCP拡張)の最初の一歩を1つ決める。新しい技を足すのではなく、覚えた技を自分の言葉で説明できる状態にするのが狙いだ。営業の現場で言えば、扱える製品の一覧表を自分用に作り直す作業に近い。
手作業フェーズ: 棚卸しして「スキルマップ」を作る
まず、#1〜#7で何を覚えたかを表にして見返した。各回の主役操作と、そのときAIに任せた部分を並べると、Phase1で積み上げたものがはっきり見える。
| 回 | 手で覚えた操作 | AI(Claude×MCP)に任せた部分 |
|---|---|---|
| #1 | 環境構築・MCP接続・立方体生成 | 最小ループの立方体生成 |
| #2 | スケッチ基礎(線・寸法・幾何拘束) | 整列・等しい拘束の分業 |
| #3 | 押し出し・フィレット・面取り | 角のR/Cの一括処理 |
| #4 | アセンブリ基礎(M6ボルト挿入) | ―(手で組付け) |
| #5 | 2級知識①(座標系・ビュー・モデリング概念) | L字の三面図を自動生成 |
| #6 | 2級知識②(フィーチャー・データ交換・製図) | ブール演算3種+円形パターン6穴 |
| #7 | 位置決め治具・寸法駆動 | M6穴と面取りをエッジ基準で一括 |
この表を、さらに「手で通せる/まだ頼る」の2列に組み直したのがスキルマップだ。いま自分の手で迷わず通せるのは、スケッチ・押し出し・フィレット・面取り・穴・ブール演算・アセンブリ基礎・STEP書き出し。逆にまだ自信がないのは、複雑な拘束の最適化・図面化(製図)・CAE/CAM・構想設計の全体像だ。この線引きこそが、客先に「ここまでは即返せます、ここからは一緒に詰めましょう」と言える材料になる。
つまずきの再訪 ― ブール演算の「積」をもう一度
棚卸しのついでに、#6でいちばん転んだブール演算の「積(交差)」をもう一度手で再現した。#6では2つのボディの重なりだけを残す操作で、新規ボディの扱いを誤って形が消えた。今回は「結合・切り取り・交差のどれを選ぶか」「対象ボディとツールボディはどれか」を声に出して確認しながら進めたら、迷わず通った。一度わざと失敗しておくと、二度目は手が覚えている ― これがPhase1全体で繰り返し起きたことだった。
同じ「総復習プレート」を、Claude Codeに自動で作らせるプロンプト
棚卸しで「何ができるか」を整理したら、それを1枚の板に全部入れて再生成する。押し出し・フィレット・面取り・穴・円形パターンを全部含んだ総復習プレートを、Claude Code(Fusion 360 MCP接続)に一括で作らせた。下のプロンプトで、Claudeが新しいデザインに直接フィーチャーを積み上げて、その場で完成させている。
Fusionで新しいデザインを作り、Phase1の総復習プレートを生成してください。条件: 1. 単位はmm(Fusion APIの内部単位はcmなので換算する)。 2. ベース板は120×80×10mm。原点を中心にする。 3. 垂直エッジ4本に半径5mmのフィレット(角を丸める)。 4. φ8mmの穴を1つ作り、Z軸まわりに6個の円形パターン(中心から半径30mmの円周上)。 5. 穴の上縁に2mmの面取り。 6. 穴はHoleFeatureを使わず、円スケッチの押し出し切り取りで貫通させる(HoleFeatureはこの環境で不安定なため)。 7. 各フィーチャーを1つずつ追加し、その都度フェイス数を確認する。 8. 完成後、等角ビューでPNGを書き出す。

注目してほしいのは条件6と条件7だ。「HoleFeatureを使わず円スケッチの切り取りで」「1つずつ追加してフェイス数を確認」という指示は、最初から書けたものではない。#6・#7で穴コマンドが不安定に振る舞い、欲張って一気に作らせて形が崩れた経験が、そのままこの2行になった。つまずいた箇所こそ、AIに外させてはいけない条件になる ― だから一度は自分の手で通す意味がある。これがPhase1を通して何度も確かめた、連載の核だ。
今回の学び ― Phase1で「自分の手」になったこと
Phase1を一枚の板に落としてみて、はっきりしたことがある。覚えたのは個別の操作ではなく、「人が意味を握り、反復はAIに渡す」という分業の型そのものだった。スケッチで形の意味を決め、寸法で基準を与えるのは人。同じ穴を6つ並べる、角を一括で丸める、という反復はAI。この境界線を引けるようになったことが、Phase1の本当の成果だ。
そしてこの境界線は、そのまま客先への提案の守備範囲になる。「治具のデータ、STEPで出せます」「この程度の部品なら自分で形にできます」と即答でき、難しい構想設計は”一緒に詰める”と正直に線を引ける。営業20年で培った「要望を要件に翻訳する力」に、ようやく”形にする手”が一本つながった。
次回の予告 ― Phase2へ
次回からPhase2(準1級・1級の実技)に入る。Phase1が「部品を1つ作る」だったのに対し、Phase2は図面から部品・アセンブリを起こす実技と、MCP拡張(架台フレームの自動生成・ロボットの可動域チェック・レイアウト配置の補助)が主役になる。「人が意味を握り、反復はAIに渡す」をどこまで装置設計に伸ばせるか ― ロボットセルの構想設計という最終目標に向けて、ここから一段、扱う形が大きくなる。
復習ボックス ― #8 Phase1総まとめ + 総復習プレート
手順サマリ(総復習プレートの再現)
- 120×80×10mmのベース板を、原点中心の長方形→10mm押し出しで作る
- 垂直エッジ4本にR5mmのフィレット
- φ8mmの穴を円スケッチ→押し出し切り取りで1つ貫通(HoleFeatureは使わない)
- その穴をZ軸まわりに円形パターンで6個(半径30mmの円周上)
- 穴の上縁に2mmの面取り
- 等角ビューで完成形を書き出す
つまずき早見表
| 症状 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 穴(HoleFeature)が不安定に振る舞う | 環境依存でHoleFeatureが落ちる/位置がずれる | 円スケッチを描いて押し出し切り取りで穴にする |
| 一気に作らせると形が崩れる | 複数フィーチャーを欲張って同時生成 | 1フィーチャーずつ追加し、その都度フェイス数を確認 |
| ブール演算で形が消える | 新規ボディの扱い/対象とツールの取り違え | 結合・切り取り・交差のどれか、対象とツールはどれかを声に出して確認 |
寸法・設定値(再現用)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| ベース板 | 120 × 80 × 厚10mm(原点中心) |
| フィレット | 垂直エッジ4本・R5mm |
| 穴 | φ8mm・貫通・円スケッチ切り取り |
| 円形パターン | Z軸まわり6個・半径30mmの円周上 |
| 面取り | 穴の上縁・2mm |
ショートカット・操作: 長方形はR / 寸法はD / 押し出しはE / フィレットはF / 面取りは「修正→面取り」 / 円形パターンは「作成→パターン→円形状パターン」 / 取り消しはCtrl+Z
用語ミニ辞典
- フィレット / 面取り: 角を丸める / 角を斜めに削る加工。エッジを選んで一括で付けられる
- 円形パターン: 1つのフィーチャーを軸まわりに等間隔で複製する操作。同じ穴を何個も並べるのに使う
- ブール演算: ボディ同士の結合・切り取り・交差。交差(積)は重なり部分だけを残す
- HoleFeature: Fusionの専用「穴」コマンド。環境により不安定なときは円スケッチの切り取りで代替する
- スキルマップ: 「手で通せる操作/まだ頼る操作」を2列で仕分けた自分用の守備範囲表
検定タグ: 3次元CAD利用技術者試験 2級 ― Phase1総括(スケッチ・フィーチャー操作・座標/ビュー・データ交換・製図の全領域を横断)。次はPhase2で準1級・1級の実技へ。


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