3Dモデルと一口に言っても、中身が詰まっているのか、面だけなのか、線だけなのかで性質はまるで違う。さらにモデリングのやり方にも「パラメトリック」と「ダイレクト」という2つの流儀がある。この記事では、3D CADの土台になるモデルの3形式と、混同しやすい対概念を一気に整理する。
まず全体像:3Dモデルの3形式
| 形式 | 持っている情報 | できること |
|---|---|---|
| ソリッド | 中身の詰まった立体(内外の区別) | 体積・重心・干渉チェック・断面 |
| サーフェス | 面の集合(厚みなし) | 表面積・NCツールパス計算・複雑曲面 |
| ワイヤーフレーム | 頂点と稜線(線だけ) | 軽い・速い(形の骨組み表示) |
ソリッド:立体を「完全に」表現する
ソリッドモデルは立体の内外を区別する情報を持つ。だから断面図が切れ、物体同士の干渉が調べられ、体積・重心・慣性モーメントが計算できる。質量や表面積、重心などの形状特性を総称してマスプロパティと呼ぶ。部品形状の作成ではソリッドでの作成が推奨される。部品の占める領域を完全に定義できるからだ。
サーフェス:面で表す。厚みはない
サーフェスモデルは3次元の形状を面の集合として表現する。面の情報を持つので、表面積の計算やNCツールパスの作成に使える。自動車のボディのような複雑な曲面はサーフェスの得意分野だ。ただし厚みがないので、体積や質量は出せない。
ワイヤーフレーム:線だけ。軽さが取り柄
ワイヤーフレームは頂点の座標と、それを結ぶ稜線だけで構成される。データ構造が簡単で、演算処理や表示速度が速い。その代わり面も中身もないので、干渉チェックや断面は出せない。
パラメトリック vs ダイレクト:作り方の2つの流儀
補足:パラメトリック=寸法・拘束・履歴で作る(あとから数値を変えて再生できる。流用設計に強い)。ダイレクト=履歴を持たず、面を直接押し引きする(パラメータを気にせず、その場で局所変形できる)。文章の中に「拘束」「履歴」という言葉が出てきたら、それはパラメトリックの説明だ。そして現代のCADでは両者は併用できる(ハイブリッドモデリング)。
B-reps vs CSG:ソリッドの2つの表現方法
ソリッドモデルの内部表現には2方式ある。B-repsは立体を境界の面で表す方式で、曲面の表現や局所的な変形が得意。その代わりCSGに比べて構造が複雑でデータ量は大きく、現実には成り立たない形状(ノンマニホールド)を作れてしまう弱点もある。CSGは直方体や円柱のようなプリミティブ(基本立体)をブーリアン演算で足し引きして立体を表す方式だ。
補足:「プリミティブの組み合わせ」と書いてあったらCSG、「境界の面で表す・局所変形が得意」と書いてあったらB-reps。現在の主流はB-repsである。
トポロジー vs ジオメトリ:つながり方と、形そのもの
トポロジーは、面・線・点といった要素どうしの「つながり方(隣接関係)」を指す。どの面とどの面が隣り合っているか、という接続の情報だ。一方でジオメトリは「形そのもの」、つまり座標・寸法・曲率を指す。「幾何学的にどんな形か」を示すのはジオメトリであって、トポロジーではない。
カーネル:CADの心臓部
これらのモデリング機能を提供しているのがモデリングカーネルと呼ばれるライブラリで、ACISやParasolidが代表格だ。ハイエンドCAD専用のものではなく、ミッドレンジのCADでも広く使われている。カーネルのネイティブ形式のファイルは、同じカーネルを使うCAD同士のデータ交換にも利用できる。
まとめ:性質は「持っている情報」で決まる
ソリッド=内外の区別、サーフェス=面、ワイヤーフレーム=線。モデルが持っている情報が、できることを決める。そして作り方は、拘束・履歴のパラメトリックと、直接押し引きのダイレクト。対で覚えて、対で思い出すのが混同を防ぐ一番の近道だ。


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