3次元CADの基礎知識には、言葉が似ているだけに取り違えやすい概念がいくつもある。ここでは特に混同しやすい5つを、正しい区別の仕方とともに整理する。どれも「対立軸」を意識すれば一気にほどける。
1. トポロジーとジオメトリ ―「つながり」と「形」は別物
ジオメトリ(幾何情報)は、面・稜線・頂点が「どんな形・どんな寸法・どこの座標か」を表す。これに対しトポロジー(位相情報)は、それらの要素が「どう接続しているか」というつながりを表す。同じ立方体でも、寸法を変えればジオメトリは変わるが、面と稜線のつながり方は変わらない。寸法の話ならジオメトリ、つながりの話ならトポロジーと切り分ける。
2. 曲線の影響範囲 ― ベジェは全体、B-スプライン/NURBSは局所
自由曲線は、制御点を動かしたときの「影響が及ぶ範囲」で性格が分かれる。ベジェ曲線は、1つの制御点を動かすと曲線全体が変形する(大域的)。一方B-スプライン曲線やNURBSは、動かした点の近くだけが変わる(局所的)ため、部分的な微調整に向く。さらにNURBSは各制御点に重み(ウェイト)を持たせられるので、真円や楕円などの円錐曲線を厳密に表現できる。全部動くのがベジェ、近くだけ動くのがB-スプライン・NURBSと覚える。なお、ベジェ曲面やB-スプライン曲面どうしの接続をなめらかにするために考案されたのがグレゴリ曲面である。
3. データ交換フォーマット ― 交換用と、そうでないもの
異なるCADの間で3次元形状をやり取りするための中立フォーマットの代表がIGESとSTEPである。IGESは曲面やワイヤフレームを、STEPはソリッドを位相情報付きで交換できる。一方、ACISやParasolidはCADの内部で形状を計算するカーネルであり、STLは三角形メッシュで形状を近似する出力用フォーマット(色や寸法拘束は持たない)。CAD間の交換はIGES/STEP、カーネルはACIS/Parasolid、メッシュはSTLと役割で分ける。
4. 履歴モデリングの参照依存 ― 変えると壊れる場所
履歴(フィーチャー)ベースのモデリングでは、後から作った形状が、先に作った面や稜線を「参照」して成り立っていることが多い。このとき、参照元になっている寸法や面を変更すると、それを参照している後続の操作が意図通りにならず、警告やエラーになることがある。逆に、互いに参照関係のない操作どうしなら、順序を入れ替えても最終形状は変わらない。後続が参照している面を変えると壊れる/参照がなければ順序は自由が勘どころ。
5. ソリッド編集とサーフェス機能の線引き
ソリッドそのものを加工する編集機能と、面を扱う機能は別カテゴリである。シェル化や厚み付け(オフセット)はソリッドモデルの編集機能、アントリムやバウンダリーは面(サーフェス)を扱う機能にあたる。名前が操作っぽく並んでいると混ざりやすいが、中身のある立体をいじるのがソリッド編集、面を作る・整えるのがサーフェス機能と用途で見分ける。
取り違えを防ぐ一言
取り違えの多くは、「形」と「つながり」、「全体」と「局所」、「交換」と「内部処理」といった対立軸を意識するだけで整理できる。用語を丸暗記するのではなく、”どちら側の話か”を毎回一拍おいて判断する癖をつけたい。


コメント