協働・産業ロボット最新動向について、いま製造業の現場で起きている変化を継続的に追う。このページは最新の動向が出るたびに更新する。
- 最新トピック
- 協働ロボを「買って一から組む」から「用途別パッケージで最短稼働」へ ― 中小向けに即戦力3パッケージ
- ロボットが「やわらかいもの・透明なもの」を見分けて掴む ― AI搭載3Dビジョンが認識の壁に切り込む
- つぶれやすい食品をロボットがやさしく掴む ― 近接覚センサー搭載ハンドが人手頼みの工程に切り込む
- 安川電機「MOTOMAN NEXT-NHC12」が十大新製品賞・本賞を受賞 — if文では書けない作業へ
- 安川電機が協働ロボ「MOTOMAN-HC35」を発売 — 可搬35kg・リーチ2030mm、物流とネジ締めに照準
- Mujinが協働搬送AGV第2弾を発売 — 300kg/1,500kg、ISO 3691-4準拠で歩車混在に対応
- このテーマの基礎知識
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最新トピック
協働ロボを「買って一から組む」から「用途別パッケージで最短稼働」へ ― 中小向けに即戦力3パッケージ
協働ロボットは「買ってから自社で一から立ち上げる」のが常識だった。これを「用途ごとに最初から組まれたパッケージを選ぶ」へ変える提案が出てきた。IDECファクトリーソリューションズは2026年6月4日、協働ロボットの用途別パッケージを、愛知県のAichi Sky Expoで開かれた産業用ロボットの展示会「ROBOT TECHNOLOGY JAPAN 2026」(6月11日〜13日)で公開すると発表した。用意したのはパレタイジング(積み付け)・マシンテンディング(工作機械への着脱)・溶接の3つで、溶接パッケージは日本初公開となる。
使う協働ロボットは中国メーカーROKAE製で、最大可搬重量は35kg。重い箱の積み付けや、加工機への重量物の着脱といった力のいる工程も射程に入る。海外メーカー製である点は、性能と価格の事実として扱う。
中小工場にとって効くのは、設置のハードルの下がり方だ。同社の安全技術により、今の狭いレイアウトのまま「安全柵なしでの稼働が可能」だとしている。協働ロボット導入で見落とされがちなのは本体価格よりも、安全柵の設置スペースと立ち上げの手間で、用途別パッケージはこの「買ってから動くまで」の距離を縮める発想だ。同社は「中小企業でも手の届く価格帯」とし、ブースではROIシミュレーターで個別の費用対効果を試算するという。
自社で試すなら、まず積み付け・着脱・溶接のどの工程を1パッケージで切り出せるかを考えるのが入り口になる。汎用の協働ロボットを買って自社で用途を作り込むより、作業が定型的で用途が決まっている工程ほど、パッケージ型との相性がよい。
ロボットが「やわらかいもの・透明なもの」を見分けて掴む ― AI搭載3Dビジョンが認識の壁に切り込む
ロボットが苦手としてきたのは、形がバラバラ・やわらかい・透明で輪郭が出にくい対象だった。これは「掴む手」だけでなく「見る目」の問題でもある。デンソーウェーブは2026年5月27日、AIを使った3Dビジョンによる軟体物・透明体の認識技術を、「ROBOT TECHNOLOGY JAPAN 2026」(6月11日〜13日・Aichi Sky Expo)で実演すると発表した。
中核はディープラーニングで認識精度を高めた3Dビジョン(Mech-EyeやCambrianビジョンシステム)だ。これを高速の人協働ロボット「COBOTTA PRO」などと組み合わせ、ラジエータのバラ積みからの取り出しと異品検査、ハーネス(やわらかい配線)の自動配索、透明体の認識とトラッキングといった、これまで人手に頼ってきた作業を狙う。
6月初旬には大阪のロボット開発企業が、指先で触れる前に対象の形をとらえる近接覚ハンドを公開している。今回のデンソーウェーブは「見て理解する」視覚側の進化にあたる。むずかしい対象を機械に渡せるかどうかは、掴む手先(触覚)と見る目(視覚)の両輪で決まり、その両方がいま同時に進みつつあることが、現場の実用に効いてくる。
形が不揃いな対象を扱う工程を抱える工場なら、ライン全体の自動化を構想する前に、自社のどの対象物なら今のビジョンとハンドの組み合わせで扱えるかを、展示会やメーカーへの問い合わせで確かめるのが現実的な一歩になる。
つぶれやすい食品をロボットがやさしく掴む ― 近接覚センサー搭載ハンドが人手頼みの工程に切り込む
ロボットは硬くて形の決まったものを正確につかむのは得意だが、形がバラバラで柔らかいものは苦手――この常識が崩れ始めた。大阪のロボット開発企業Thinker(シンカー)が2026年6月2日、食品向けにカスタム開発したロボットハンド「Think Hand F」を発表し、東京ビッグサイトで開かれた食品機械の展示会FOOMA JAPAN 2026(6月2日〜5日)で実機を初公開した。
中核にあるのは近接覚センサーという技術だ。指先が対象物に触れる前から、その形や柔らかさをとらえる。これにエッジAI(機器側で動くAI)とやわらかい素材の指を組み合わせ、つぶれやすい・滑りやすい・傷つきやすい食品を、個体差に合わせて「やさしく扱う」ことを狙う。対象はピッキング、移載、整列、包装前工程といった食品製造の現場作業だ。
食品工場や惣菜の現場は、製造業の中でも自動化が遅れてきた領域だった。唐揚げも惣菜も一つひとつ形と硬さが違うため、決まった動きを高速で繰り返す従来のロボットでは扱えず、人手に頼るしかなかったからだ。ロボット導入の成否を分けるのは、実はアーム本体の性能よりも「先端にどんな手を付けるか」であり、その手先=エンドエフェクタの進化が、人手頼みだった工程を自動化の射程に入れつつある。
人型ロボットの全身デモが注目を集めがちだが、現場の実用は手先から先に来る。形が不揃いなものを扱う工程を抱える工場なら、ライン全体の自動化を構想する前に、「どの工程のどの対象物なら、いまのロボットハンドで扱えるか」を展示会やメーカーへの問い合わせで確かめるのが現実的な一歩になる。
安川電機「MOTOMAN NEXT-NHC12」が十大新製品賞・本賞を受賞 — if文では書けない作業へ

安川電機の自律人協働ロボット「MOTOMAN NEXT-NHC12」が、2026年2月、日刊工業新聞社「十大新製品賞」(第68回) の本賞を受賞した。安全柵なしで人と並んで作業でき、視覚と触覚に相当するセンシング機能をアームに標準搭載しているのが特徴だ。AI判断によって、従来は「if文では書けない」とされてきた領域に踏み込む。代表的なデモが、2025年に開かれたスマート工場EXPOで披露された自律ジャガイモ箱詰めだ。形が不揃いの個体を選別しながらカゴに詰めていく動作が高く評価された。受賞後も各種展示会での実機展開が続いており、中小製造業が現物を確認できる機会は今も多い。ここで押さえたいのは、産業用ロボットの歴史が長く「同じ動作を、決まった位置で、正確に繰り返す」進化だった点だ。自動車工場の溶接、半導体の搬送、家電のネジ締め——いずれも個体差のないワークが前提で、だからこそ高速・無人で動かせた。NHC12が踏み込んだのは、その前提の外側にある。形がバラバラ、重さがマチマチ、表面のムラが個体ごとに違う対象を、視覚と触覚とAI判断の組み合わせで扱う領域だ。とりわけ「触覚センサー標準搭載」の意味は大きい。これまでのロボットは視覚で位置を測ってからアームを動かす流れが基本で、掴んだ物体の硬さや滑りやすさまでは分からなかった。触覚が標準で入ると、ロボットは「掴んでみて、想定と違ったら持ち直す」判断を自分で下せる。人の手の動作に一歩近づく。中小製造業の感覚で言えば、検査・仕分け・箱詰めという末端工程が変わるということだ。食品工場で野菜を仕分ける作業、町工場で完成品を検品する作業、物流倉庫で荷物を棚に詰める作業——いずれも長年「人がやる前提」だった工程に、ロボットが入り込み始める分岐点に立っている。自社で試すなら、まず手元の工程を「形が決まっている工程」と「個体差のある工程」に1枚の紙で仕分けてみるとよい。前者は従来型の安い産業ロボでも足り、後者がMOTOMAN NEXT世代の候補になる。両者を混同したまま「うちはロボットはムリ」と決めつけている工場は多く、ここを分けるだけで投資判断の解像度が一段上がる。協働ロボは安全柵が要らないぶん稟議も通りやすく、設置面積も小さい。ファナックのCRXシリーズ、ユニバーサルロボットのe-Series、デンソーのCOBOTTA Proといった既存の選択肢に、安川のMOTOMAN NEXTが加わった構図になる。
安川電機が協働ロボ「MOTOMAN-HC35」を発売 — 可搬35kg・リーチ2030mm、物流とネジ締めに照準

安川電機が協働ロボットの新モデル「MOTOMAN-HC35」を2026年5月11日に発売した。可搬質量は従来モデルHC20DTPの20kgから35kgへと75%向上し、最大リーチは2030mm、設置面のフットプリントはΦ380mmからΦ270mmへ小型化している。新開発のトルクセンサで衝突時の応答速度を高め、安全停止と作業速度を両立させる設計だ。手首トルクは200Nm以上を確保し、全姿勢でのネジ締め作業にも対応する。ここで効いてくるのが「重可搬」という線引きだ。協働ロボットの可搬重量は長く20kg台が現実的な天井で、30kgを超える領域は安全柵で囲う産業ロボの仕事、というのが業界の暗黙の了解だった。HC35はその線を75%押し上げてきた。狙いはパレタイズ、重量物搬送、大型ワークの組立で、対象顧客は工場の通路幅に余裕がない中小〜中堅が中心になる。経営者目線で大きいのは、今まで「フォークリフト+作業員2人」で回していた工程を、1台のロボに置き換える検討が現実的になった点だ。設置面Φ270mmは直径27cmの円に収まるサイズで、既存ラインの1工程分のスペースをそのまま使える。レイアウトを大きく組み替えずに導入できるため、稟議の心理的ハードルも下がる。協働ロボの安全は、人と接触したときの押す力や押し当て時間が安全規格で定められている。HC35がトルクセンサを刷新したのは、この接触検知の速度を上げ、速度を落とさずに安全を担保するための設計判断だ。可搬重量とは、ロボットが安定して持ち上げ・運べる物の重さの上限を指す。これが35kgまで上がると、1人では持てない部品や、2人がかりで持っていた大型ワークを1台でさばけるようになる。リーチ2030mmは腕を伸ばしたときに届く距離で、約2メートル四方の作業範囲をカバーできる。次に確認すべきは、自社のどの工程から入るかである。定石は、ネジ締め・部品供給・パレタイズの3工程から検討を始めることだ。いずれも作業内容が定型化しやすく、効果も数字で測りやすいため、最初の1台の投資判断がしやすい。重い部品の供給で腰を痛める作業者がいる現場、繁忙期だけ人を増やして対応している搬送工程などは、特に置き換えの効果が見えやすい。
協働ロボを実際に導入したときの総費用とROIは、中小製造業3社の試算で分解している。
Mujinが協働搬送AGV第2弾を発売 — 300kg/1,500kg、ISO 3691-4準拠で歩車混在に対応

Mujinが「MujinAGV」ラインアップ拡充の第2弾として、2026年3月25日、可搬300kgと可搬1,500kgのセーフティーモデル2機種を発売した。両機種はISO 3691-4に準拠し、作業員と同じエリアで安全に稼働できる。国内製造現場ですでに1,500台超が稼働するMujinAGVの、最も軽い帯と最も重い帯を新たに埋めるかたちだ。発売後の2026年5月にかけて現場稼働も相次いでいる。ポイントは「歩車分離が難しい中小工場」に効くスペックという点にある。大手の自動車工場のように人とAGVの動線をきれいに分けられない現場では、AGVが一時停止し、人が通過し、再起動する、という挙動を高い精度で繰り返す必要がある。ISO 3691-4はその「人と混ざる前提」の安全規格だ。認証取得モデルは保険適用や労基対応の両面で、導入のハードルが下がる。歩車分離とは、人が歩く通路と車両が走る通路を物理的に分けて事故を防ぐ考え方を指す。広い敷地ならラインを引いて分けられるが、敷地に余裕のない町工場では現実的に難しい。だからこそ「人と同じ通路で安全に止まれるAGV」の価値が高い。中小製造業の実情として、組立や検査よりも先に、搬送・荷下ろし工程の人手不足のほうが深刻なケースが多い。重量パレットを倉庫から組立ラインまで運ぶ仕事は、人が辞めると一番先に詰まる。300kgから1,500kgの帯を埋めたことで、「人がやっている搬送のうち、AGVが担えない領域」が一気に狭まった。AGVは「無人搬送車」のことで、床に貼ったマーカーや内蔵地図をたよりに、人が押さなくても荷物を運ぶ車両を指す。可搬300kgのモデルは中量の部品箱や台車の置き換えに、1,500kgのモデルは重量パレットの長距離搬送に向く。同じ通路を人と共有できるため、新たに専用レーンを工事する必要がない点も、敷地の限られた工場には大きい。自社で試すなら、まず1日に何回パレットを手で運んでいるか、その移動距離と重量を1週間記録してみるとよい。数字が出れば、どの帯のAGVが必要かが見え、投資の優先順位もはっきりする。搬送は効果が時間で測りやすく、最初の自動化対象に向いている。人手不足で真っ先に止まりがちな工程だからこそ、ここを自動化すると現場全体の流れが安定する。
搬送の無人化を実際の現場に落とし込んだ例は、再春館製薬のAMR・DPS導入が参考になる。
このテーマの基礎知識
製造現場で使うロボットは大きく三種類に分かれる。産業用ロボットは安全柵で囲い、決まった位置で同じ動作を高速に繰り返す装置で、自動車の溶接や半導体搬送のように個体差のないワークを前提にする。協働ロボットは安全柵なしで人と並んで作業でき、設置面積が小さく稟議も通りやすいが、人と接触したときの力が安全規格で制限されるぶん速度や重さに上限がある。AGV・AMRは床を動いて荷物を運ぶ無人搬送車で、組立や検査より先に深刻化しがちな搬送工程を担う。選ぶ際の基本指標は、持ち上げられる重さの上限を示す可搬重量、腕が届く距離を示すリーチ、そして設置に必要な床面積だ。近年はフィジカルAIの登場で前提が動きつつある。これは画面内で動くソフトのAIに対し、現実世界で物に触れて動かすAIを指し、視覚と触覚を組み合わせて形や重さが不揃いな対象も扱えるようになってきた。従来は決まった形のワークしか任せられなかったが、検査・仕分け・箱詰めといった末端工程まで自動化の射程に入りつつある。まず自社の工程を形が決まっている工程と個体差のある工程に仕分けると、どの種類が要るかの解像度が上がる。


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